塾講師のぼやき②「必要とされない塾」
はじめに
塾講師をやっている私が日々ぼんやりと感じていることを書いていくコーナーです。
今日のテーマは「必要とされない塾になりたい」です。
塾講師としてのよろこび
今回の話は私個人の意見であるということ。そして極論にも近い理想論であることを最初に断っておきます。
私にとって塾で仕事をしていて一番やりがいというか達成感を感じるのは生徒が自分から離れていっているなと感じる時です。
もっと極端にいえば「もうこの塾必要ないから」といって退塾して行く時です。
それは彼ら彼女らにとって自立の時だからです。
うちの塾は特にそうなんですが、地域の中でも学習に何らかの行き詰まりを感じて入塾してくる生徒が多いです。定期試験の点数が下がったのでなんとかしてほしい。学校の授業についていけなくなったのでなんとかしてほしい。家では全く勉強しないので塾で習慣を身につけさせて欲しい。生徒側からも保護者側からもこういった要望はたくさん出てきます。
当然お金をいただくのでそういった生徒には親身になって対応します。
つまづきを探し、そこから一つ一つ解決できるようになるまで寄り添って指導します。
そうすると大抵の生徒は何らかの結果が出ます。
成績が上がった。先生に褒められた。学校で自分から手を挙げて発言できた。
そうして塾の先生は信頼を勝ち取っていくわけですが、ここで少し困ったことになる生徒が出始めます。
それは「今後も困ったら塾の先生が何とかしてくれる」と感じてしまう生徒です。
先生を頼るな
家庭学習の習慣もなく、自習する能力も低い生徒には我々は文字通り手とり足とり指導します。ワークの何ページから何ページをやるか、どういうスケジュールで進めるか、どういったノートの使い方をするかから始まり、この問題はどういう手順で解くか、テストではどういう順番で処理するか、テスト勉強はどういうやり方をするかなど事細かに指導していきます。
それに従ってやっていくうちに少しずつ結果が良くなっていくと、中には「先生の言うとおりにやったら点が上がったのだから、今後も先生の言うとおりにやろう」と考える
生徒が出てきます。
そういった生徒は一見すると素直だし、「先生、先生」と懐いてくれるのでカワイイ生徒に見えるかもしれませんが、私はこの状態が好ましいと思ったことはありません。
なのでそういった生徒たちには次のように言います
「前回のテスト対策で一番効果があったと思うやり方をそのまま使っていいから、次のテストは自分でスケジューリングしてごらん」
「先生にやれって言われたけど正直これはやっても効率が悪いなと思った部分は減らして、その分自分なりのやり方をプラスしてごらん」
すこしずつ塾のやり方から自分のやり方へシフトさせる方向へと話を持っていくのです。そのやり方が間違っていても別に構いません。その時は話し合って方向を修正させればいいだけですから。
同時にわからないことがあって質問に来た生徒に対しても、答えを教えていた部分を考え方や調べ方を教えて一旦自分なりに答えを出してからもう一回質問に来るように促します。
そうやって「どうすればいいんですか」から「こうやってみたんですけど間違ってませんか」という態度で塾に通ってもらうようにします。
塾が重荷になるのが理想
そうしているうちに生徒たちから「先生、先生」が消えていきます。
自分で考えてやってみるが定着してくるとそれまでの甘えた表情が本当に一変して大人の顔つきになります。
ここまでくればしめたものです。
彼らはほんのすこしのアドバイスで好成績を維持できるようになり、こちらの更なる要求にも応えてくれるようになります。
そしてその究極完成形が昨年現れました。
その生徒は中学校の定期試験の1週間前からテスト当日までのすべての授業を欠席したのです。理由は自分の勉強がやりたいのに塾のやり方でやらされるのがいやだからというものでした。
その間は開放されている自習室にも一切姿を現しませんでした。
そして翌週
その生徒は主要5教科を1教科100点、4教科90点台という結果のテストを自慢げに持ってきてくれました。その生徒にとって中学のテストで満点は二度目でした。一回目は私が支持したことを忠実に守って満点。二回目は塾に反逆を起こしての満点。
これこそが私が望んでいる塾の形です。
最終的には自分で全てを管理して学習をすすめられるようになり、塾の課題が邪魔になるという生徒をたくさん育てたいのです。
そしてうちの塾が提供できる一番レベルの高い授業のクラスに満足できなくなったら塾をやめてもらっていいのです。
そうやって日本中の子供たちが学習習慣を身に付け塾をやめてく日がくればどんなに嬉しいことかと思います。まぁ失業しちゃうんですけどね。
おわりに
いろいろ書いてきましたが
あくまで個人的な意見です。うちの塾がそういう方針でやっているというわけではありません。まぁそういう人間もいるということです
それでは。