アニメハチナイ感想#8
第8話「夏に向かって」
2週間ぶりに僕らの「ハチナイ」が帰ってきた。
宇喜多は気になる双葉を見つけ、有原は「大会に出よう」と言い出し、掛橋先生は部への昇格のために奮闘する。
そんな第8話の感想と考察を書いていきます。
先人の足跡を辿る
公式サイトstoryより引用
「あのね…大会に出ない?」
梅雨入り前のある日の練習後、有原が発したこの提案から今回の話が始まります。
このシーン。
ぽかんとする人、口を真一文字に結び険しい表情の人、ニヤリとする人など部員でも有原の発言の捉え方が違っているのが面白いですね。
それもそのはず、ほとんどの部員が女子野球の大会とはどういうものなのかの知識がないのです。
というわけで早速検索をかけると、概要とともに随分小さな櫓のトーナメント表が。
女子野球部のある学校は全国で約30。予選もなくいきなり全国大会(作中では兵庫での開催)とのこと。バスケ経験者の野崎はその規模の小ささに驚いているようでした。
そこで同好会を取材するにあたり自主的に資料集めをしていた自称新聞部・中野から女子野球の歴史が語られます。
日本の女子野球の歴史は古く大正時代まで遡るそうです。学生スポーツの一環として始まるも根付くことなく消滅。戦後には2年ほど女子プロ野球も開催されますがやはり自然消滅。(実はアメリカでも女子のプロ野球は何度も形だけは作られているものの長続きしていないという現実があるそうです。)
その後しばらくは下火だった活動も80~90年代に入り国際交流試合をきっかけに再燃。女子硬式野球連盟も発足し約30校の加盟校が名前を連ねるまでになったということでした。
おそらくこの中野の話を聞きながら多くのアニメ・マンガ・ラノベファンは「大正野球娘」や「鉄腕ガール」のことを思い出していたのではないでしょうか。
前述の大正時代の女学生野球と戦後まもない頃の女子プロ野球の様子が垣間見れる作品なので是非見てみることをおすすめします。
女子野球としても、アニメ(マンガ)としても偉大な先人たちの作った道の上に自分たちがバトンを受けて立っているのだということを認識したメンバーたちは気持ちを新たに大会参加への決意を固めるのでした。
部活動と教員の向き合い方
そうは言っても未だ同好会のまま、部費の申請もおりていない状態ですので兵庫への遠征など無理な話。
まずは部への昇格を改めて確認してから、ということになりました。
この時点では九十九情報により部への昇格はすんなり行くものと思っていた一同でしたが、結果は不受理。予算等の見通しが甘い(アマチュア野球であっても費用がかかる)ということと顧問の掛け持ちという人員不足の観点からの却下でした。
ここで届けを受理しなかった教頭先生の判断は至極当然のものだと思います。
私立であっても公立であっても、少子化による入学希望者減少や自治体の財政難などで新しい部活動にホイホイ予算を回せる学校などほとんどありません。
更には昨今叫ばれている教員のブラック勤務の実態。校務分掌の名のもとに若い教員には大量の仕事が押し付けられ、そこに研修、授業準備など個人の仕事がのしかかり、止めに部活動の顧問までやらされてヘトヘトになっている教員がたくさんいると耳にします。よく耳にするのが「生徒一人ひとりに向き合う時間が本当に取れない」という嘆きです。
すでに剣道部の顧問を引き受けている掛橋先生の負担が増えることは間違いない話で安請け合い下挙句に監督不行き届きでの不祥事が起こってしまってはいけないという判断は実に正常な判断だと思います。
野球は軽いものを含めると怪我や事故が起こりやすいスポーツでもあるので、責任問題になったときにも顧問が掛け持ちだったからその場にいなかったというのがまずいことはわかります。
前回の生徒会のときも書きましたが、このアニメは学校内に基本的に敵がいないアニメです。今回の教頭も生徒と教員両方の味方であろうとするからこそ慎重になれと言っているのだし掛橋先生の覚悟を問いただしているのです。
それが伝わるからこそ掛橋先生も真剣に悩むことになります。
このシーンでの倉敷先輩の担任の言葉もいいですよね。
それが最善ではないと理解しつつも「今年は諦める」という考え方もあるんだよとアドバイスをくれています。こういう時ついつい「なにがなんでも」という考えに陥ってしまいがちですが3年生がいない同好会はたしかに来年でもいいという柔軟性があればより部への昇格も検討されやすくなると思います。
「そういうのをわかってもらうのも教師の仕事なんじゃないでしょうか」
大人が大人の考え方をしているのが好感が持てますね。
野球は独りではできない
悩める掛橋先生の背中を押したのは同好会の面々の前向きな姿でした。
宇喜多が見つけた双葉はかつてヒマワリ畑だったグラウンドの置き土産。それが芽を出し新たな世代に種をつなぐために成長を始めていました。
幾度となく消滅してはその度に再興してきた女子野球。冬にかれて倒れてしまっても次の春にはふたたび芽吹き夏花を咲かせるヒマワリ。問題を抱えたり夢を諦めそうになりながらも前を向く同好会のメンバーたち。
その姿を見て掛橋先生はもう一度頑張ってみると宣言。決意を新たに部への昇格を目指します。
同時に部員たちも様々な形で動き始めます。
壁新聞で現状を訴える中野を筆頭に周りの友人たちに署名を集める有原たち。(アプリ版ハチナイメンバーがたくさん登場したのでアニメしか見ていない方は異様に濃いモブキャラにびっくりしたことでしょう。)
鈴木と九十九は予算などの洗い直しをして書類作成を助けます。
そうこうしているうちに梅雨も明けヒマワリもすこしずつ大きくなっていきました。
そして何度目かの書類提出。
ここまでの成果が実り、予算の方は理解が得られたものの「覚悟」の方はまだ見えていないと言われた掛橋先生が取り出したのは有原たちが集めた署名でした。
正直、なんで生徒が集めた署名が掛橋先生の覚悟の証になるんだ?と疑問符つきまくりの展開です。教頭も「掛け持ちについての解決策はないようですね」とど直球に突っ込んでいましたね。
おそらく、教頭のいう覚悟というのは「周りを巻き込む覚悟」だったのではないでしょうか。自分ひとりでは剣道部と野球部の掛け持ちは無理だから誰かに助けてもらうという覚悟。大人になって仕事を始めると頭を下げて仕事を手伝ってもらうのって意外と勇気がいるんだと知りますよね。でも実は大切なことなんだと思います。
教頭はそれを掛橋先生に気づいて欲しかったのではないかと思います。
まぁ最後まで「気合で」とか言っちゃってるんで教頭自ら剣道部の方を引き受けていましたが…
何はともあれ部への昇格を果たし晴れて里高野球部となったわけです。
今回の話をみてつくづく「野球は独りではできないんだなぁ」と感じました。
チームメイト、学校、友人、保護者、地域、そして何より対戦相手の力も借りないと野球というゲームは成立しません。
どうしても学校や保護者や相手チームとの対立を描くことでドラマを生み出したくなるものですが、実はそういった人たちに支えられて野球ができるんだという描き方をしているハチナイはとても好感が持てますね。
おわりに
OPで最後に有原が部室を出て行くシーン。いつの間にやら賑やかな練習前の風景に変わっていましたね。EDの一枚絵もひとつ前に変わりましたしいよいよここから夏の大会が始まるんですね。
私はというと相変わらず体調の方は絶不調なので更新頻度は落としたままですが、すこしずつブログを更新していこうと思います。