カープで一番活躍した外国人はウルソーですか?

塾講師 兼 助っ人外国人のうルソーがカープとアニメと教育についてグチグチ言います。

今更よりもい論(7)「轟伸恵論」

f:id:ulso45:20190425130305p:plain


1年経っても色褪せない不朽の名作「宇宙よりも遠い場所」を味わい尽くす今更よりもい論
第七回目は作品中では重要ではないものの忘れられない脇役に焦点を当てて書いていこうと思います。

今回紹介するキャラは「轟伸恵」と「財前敏夫」の二人です
キャラの画像等は公式サイトを見てください。

 伸恵さんは、地質学者として観測隊に同行している研究者で、日本に残してきた恋人「ユウくん」のことが気になってしょうがないというキャラクター。
 敏夫は、観測隊の通信担当兼メカニック。ロマンチストで惚れっぽいが女性経験自体は少ないというキャラクターです。

 

お品書き

 


2,麻雀と敏夫

 




《伸恵論1,女子高生四人との距離感》

 

 そもそもこのブログでよりもいについて語ろうと思ったきっかけはネットでたくさんの人のよりもい考察を読んだからです。その時からなぜこのキャラクターについて言及している人が少ないのかと思っていた人物、それが轟伸恵さんです。ネット上では「ユウくんのやべーやつ」と呼ばれネタキャラと認識されているようですが、かなり味わい深いキャラクターだと個人的には思っています。
 伸恵さんって正直よりもいに必要ないキャラですよね。本編に絡んでくるわけでもなくひたすら「ユウくん」を連呼するだけの役。でもああやって本編に登場しているわけです。当たり前ですが小説と違ってアニメではキャラデザイン、色塗り、アフレコなど様々な部分でキャラを一人増やすとその分コストがかかります。ということは伸恵さんはコストを払ってでも登場させるべきキャラクターとして製作者が意図をもって生み出した人物ということになります。
 
 ではその役割とはなんでしょうか。私は二つあると思っています。一つ目は単純に4人組と絡まない役です。実際に集団生活をしているとかなり多くの「知っているし話したこともあるけど、積極的には交流を持っていない」人が存在します。アニメや作り話の世界だからといってそういう人を全て排除してしまうと主人公に関係のある人だけしか画面に映らないかなり不気味な世界が出来上がります。モブキャラではなんとなく味気ない。そこで「ちびまる子ちゃん」のクラスメートのようにいつでも積極的に関わってくるわけじゃなくてもしっかりデザインされた他人が必要になってきます。伸恵さんは四人が知らない大人たちの中に入って生活するときのよく知らないけど無関係ではない距離にいる他人としての役が与えられていると思います。

 

 二つ目は四人の成長に対していつまでも成長しないキャラとしての対比の役割です。物語において陰と陽、正と負、静と動など対比の描写は多いですが、よりもいも例に漏れず多くの対比が使われています。伸恵さんはその対比の一つとして「変わっていく四人」「変わらない伸恵さん」という対比を担っていると考えます。
 7話で登場した伸恵さんは恋愛をする大人の女性(あきらかに登場時からトラブルを抱えていますが)として、まだまだ右も左もわからない女子高生と対比されます。海外旅行用の使い捨てシムのデータ通信料を気にする結月と、がっつり国際電話で痴話喧嘩する伸恵さんは経済力的にも違っています。
 11話ではそれが一変します。陸上部との関係を断ち切り前へ進む決断をする日向に対して、相変わらずユウくん一筋でしがらみにとらわれている伸恵さんという構図が描かれます。ラストで日本に残してきた日向のしがらみが解消されると同時にユウくんからのメールが届くのも面白いですね。
 13話ではもはや伸恵さんの方が置いていかれている感があります。母親との強い絆が胸に生まれた報瀬はあんなに苦労して手に入れたノートPCもしゃくまんえんもあっさり南極に置いていきます。形あるモノを手元におかずとも精神的な充足が得られるまでに成長した報瀬の姿がそこにはあります。それに対して伸恵さんは相変わらず手編みのセーターでもってなんとかユウくんとの関係をつなぎ止めようとしています。
 このように四人が、停滞している伸恵さんを追い抜いてグングン成長していくさまが描かれていることがわかりますが、これは前述の「近くも遠くもない知り合い」だからこそできる描写です。遠すぎるモブではどうしようもないし、近すぎる間柄では四人の成長に触発されて変化していかないといけなくなります。(吟隊長などがそのいい例です)伸恵さんはそんな距離感を担って生み出されたなくてはならないキャラクターだったのです。




《伸恵論2,麻雀と敏夫》



 さて、次に紹介するのは財前敏夫です。彼と吟隊長の身分を越えた叶わぬ恋は…まぁ、置いておくとして。今回はよりもいに度々登場する麻雀の強さの序列について考えてみたいと思います。
 実際に報瀬が入って麻雀をやっている描写があるのは二回、11話と13話です。11話の面子は隊長・かなえさん・保奈美さん・報瀬で、報瀬が16000点の倍満相当役をツモってくるシーンが描かれています。この時のセリフから吟隊長は強い、貴子(報瀬母)も強い、報瀬もそこそこやれる、かなえさんと保奈美さんはまぁ相手できる程度には打てるくらいの実力だと思います。
 13話の面子はかなえさん・敏夫・伸恵さん・報瀬で、報瀬が24000点の三倍満をロン上がりしているシーンが描かれました。ここから考えて振り込んだ敏夫が最弱レベル、伸恵さんもさほど強くない(おそらくかなえさんよりも弱い)のかなと想像します。
 というわけで観測隊内の麻雀序列はこうなります。

 貴子>>吟≧報瀬>かなえ>保奈美≒伸恵>>敏夫

 だから何だと言われそうですが、この順位は実はあることと共通している、というのが私の見解です。それは自分の中の「迷いのなさ」「思いの純粋さ」です。

 麻雀はそもそも、引いてきた牌の中から要不要を区別し不要なものを切り捨てていくゲームです。あとあとこっちも有利になるかもといって中途半端な待ち方をするとかえってあがれなくなり、思い切って捨てるべきものを捨てられる人ほど強くなっていきます。(とくに相手がリーチしている時の牌の切り方は強い弱いがはっきり出ます)観測隊におきかえても「自分の大切にしているもの」が明確になっており「切り捨てるもの」もはっきりしている人物ほど強く、それがブレている人ほど弱く設定されているのではないでしょうか。
 そう考えると貴子が雀帝の異名を持つのも納得です。仲間と家族を愛していた貴子はその思いの純粋さにおいても群を抜いていたということになります。吟隊長は12話の「思い込み」についてのセリフなどからやはり「意志の強さ」が伺えます。報瀬が11話で倍満⇒13話で3倍満になっているのも12話での精神的な成長が無関係ではないでしょう。
 
 そして最弱の敏夫です。彼は現在進行形で恋愛方面に迷走中です。吟隊長への思いは本物でしょうが、弓子さんのことも憎からず思っているのは明白です。弓子さんも敏夫の相談を茶化さず聞いてあげているあたりいい友人だと思っているのでしょう。(恋愛に発展するかは不明ですが)敏夫は「何を大切にするべきか」がブレているので麻雀でもあっさり三倍満に振り込みます。弓子さんも「まだ諦めてなかったのか」と呆れてしまいます。彼は今、弓子さんが示してくれている友愛の情を大切にしてそちらを温めて行くべきだとおせっかいながら思ってしまいす。
 余談ですが、と言いつつこちらも本題ですが、「じゃあ 伸恵さんはなんで麻雀弱いの?」ということになります。ユウくん一筋、「大切なもの」は誰よりもはっきりしているのだから。私はこんな解釈をしています。本当はユウくんとの付き合いを迷っているのではないのか、と。
 彼女は生粋の地質学者です。大きなスポンサーがなくても南極に行って調査がしたいという好奇心と探究心を兼ね備えています。ユウくんがどれほどの人かは知りませんが、オーストラリアまで恋人を見送りに来ないで国際電話で文句を言うあたり大人物であるようには思えません。伸恵さん自身もしかしたらユウくんのケツの穴の小ささに気づいているのではないでしょうか。それでも自分が好きになった人で、自分を選んでくれた人だから必死に嫌いにならない努力をしているのではないでしょうか。なんとか日本に変えれば元の関係に戻れると自分に言い聞かせているのではないでしょうか。
 麻雀にその迷いが反映されているのだとしたら…もう彼女をユウくんのやべーやつとは呼べなくなりそうです。


 今回は番外編ということでこの辺でおしまいにしますが、よりもいに出てくる大人たちは皆、魅力的で語りたくなるようなキャラの持ち主です。(「クリスマスケーキ!」の人とか、「顔色良いか」の人とか、ゴトウとヤジマとか)あまりネット上で取り上げられないキャラクターの魅力を改めて見直してみるのもアニメの楽しみ方の一つだと思います。みなさんもメインキャラ以外の魅力の再発掘楽しんでみてください。


今回は以上です
読んでいただいてありがとうございました



 最終回はこちらから

ulso45.hateblo.jp